自宅で盗聴器探した被告…教授殺害すれば「自分を監視する団体の首謀者が分かると思った」[2010.11.26]

2009年1月14日に中大教授が刺殺された事件で、被告は自宅内を盗聴・監視されていると感じていた。

※以下転載


msn 産経ニュース-自宅で盗聴器探した被告…教授殺害すれば「自分を監視する団体の首謀者が分かると思った」 [2010.11.26]

自宅で盗聴器探した被告…教授殺害すれば「自分を監視する団体の首謀者が分かると思った」

《中央大学理工学部教授の高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を刺殺したとして殺人罪に問われている卒業生で家庭用品販売店従業員、山本竜太被告(29)の被告人質問で、ゆっくり慎重に言葉を選ぶように質問していく男性弁護人。山本被告はうつむきがちに男性弁護人の方を見ながら、小さな声で質問に答えていた》

 《質問は、山本被告が高窪さんに盗聴されていると感じた経緯についてだ。山本被告は、高窪さんが山本被告を監視する団体に所属しているとの思いを募らせていた》

 《山本被告によると、授業中に別の教授から「なぜしゃべらないのか、異常だぞ」と言われたことがあったという》

 弁護人「その発言は君に向かっていったのですか」
 被告「私の方は向いていませんでした」
 弁護人「でも君に向かっていったと受け止めたのですか」
 被告「はい」
 弁護人「なぜ」
 被告「その当時、自宅で話をしていなかったので、そのことを指摘して教授が怒ったんだと思いました」
 弁護人「そのことを教授はどうやって知ったと思いますか」
 被告「盗聴器を使って調べたんじゃないかと思いました」

 《疑いを募らせた山本被告は、自宅の壁のコンセントをはずしたり、テレビやパソコンを調べたりしたという。しかし、盗聴器は発見できなかった》

 弁護人「発見できなくても、盗聴されているのは間違いないと思いましたか」 被告「間違いないと思いました」
 弁護人「今でも間違いないと思いますか」
 被告「今でも盗聴されていたと思います」

 《山本被告が監視されていたと主張する団体に質問が及ぶ》

 弁護人「監視したり、盗聴している人は高窪先生1人ですか、複数ですか」
 被告「複数と思いました」
 弁護人「その中で、高窪先生はどんな立場の人だと思っていましたか」
 被告「自分のことを盗聴している人の1人だと思いました」

 《研究室にもこの団体の人物がいるという不信感を募らせていった山本被告。一つの転機になった平成15年12月の研究室の忘年会に話題が移った》

 《山本被告はこの忘年会に参加後、食中毒になり、翌日の集合写真に参加できなかった。研究室から陥れられたと思いこむようになる》

 弁護人「忘年会で他の人が食中毒を君に訴えましたか」
 被告「そういうことはなかったです」
 弁護人「食中毒になったことについて研究室の人からは声をかけられましたか」
 被告「声はかけられませんでした」
 弁護人「撮れなかった集合写真について話した人はいましたか」
 被告「いません」
 弁護人「誰かに尋ねましたか」
 被告「誰にも尋ねませんでした」

 《山本被告は男性弁護人の質問に、時折、考え込んだりしながら、淡々と答えを続ける》
 《続いて、食中毒になった後、山本被告が高窪さんを訪ねたときの質問に及んだ》

 弁護人「訪ねたのは食中毒になったことの報告が主たる目的ですか」
 被告「いいえ、違います」
 弁護人「どんな目的ですか」
 被告「食中毒にかかったか、聞きたくて行きました」
 弁護人「それだけですか」

 《被告は一瞬、考え込んでこう答えた》

 被告「盗聴器を仕掛けているか、聞きにいきました」
 弁護人「君の周りに仕掛けたということ?」
 被告「はい」

 《ここで、「いま聞いている、訪問とはいつのことか」と今崎幸彦裁判長が確認した。男性弁護人は16年9月だと即答する》
 《このとき、山本被告はすでに大学を卒業しており就職した食品メーカーも退職していた。弁護人は退職の原因について聞いた》

 弁護人「退職に高窪先生が関与していたと思いますか」
 被告「いいえ」
 弁護人「退職の理由は何ですか」
 被告「(しばらく考え込んで)会社の寮の隣の部屋から『何で間違っている』という声が聞こえたり、夜中に音楽をかけたりしていたからです」
 弁護人「隣の人も君を監視する団体に関係あると思いますか」
 被告「はい」

 《山本被告は、この後転職した会社や自宅の前でも不審な人物を目撃し、自分を監視しているように感じていたという》
 《その組織は、高窪さんの指示を受けて山本被告の調査をしているのではないかと思ったという。その中で、山本被告は高窪さんが組織の上位にいると感じるようになった》
 《殺害の動機に質問が及ぶ》

 弁護人「組織の監視から逃れるため3つの方法を考えましたね」
 被告「はい」
 弁護人「自殺は考えましたか」
 被告「考えました」
 弁護人「なぜやめたんですか」
 被告「自殺しても何も変わらないと考えたからです」
 弁護人「いじめ殺されることも待ちましたか」
 被告「ありました」
 弁護人「それはいやだった?」
 被告「はい」
 弁護人「3つめが高窪先生を殺害することですね」
 被告「はい」
 弁護人「殺害の効果についてはどう考えていましたか」
 被告「団体の首謀者が分かると思いました」
 弁護人「殺意が揺らぐことはなかったですか」
 被告「ありませんでした」

 《証拠採用された、山本被告が中央大学の廊下を走る様子を撮影した動画について弁護人が質問した》

 弁護人「あれはどういう動画だったのですか」
 被告「高窪先生が中央階段から研究室に入っていく様子を調べるために撮りました」
 弁護人「廊下で殺害したことも想定していたのですか」
 被告「最初から選択肢に入っていました」

 《山本被告は廊下で背後から高窪さんを襲うことも考えていたという》

 弁護人「高窪先生が防刃チョッキを着ていたと考えていたんですよね。それなら廊下で背中から襲っても刺さらない可能性がありますが…」
 被告「刺さるかどうかは別にして、一度やってみて刺さらなかったら、別のところを攻撃しようと考えてました」

 《ここで、今崎裁判長が再度、動画の意図について確認する。山本被告は前を向いて「時間や歩き方を調べるために撮りました」と回答した》
 《午後5時13分、ここで裁判長が閉廷を告げた》

 裁判長「今日はこれで終わります」

 《今崎裁判長は29日に、引き続き被告人質問と、鑑定医の証言を聞く予定であることを告げ、この日の公判は終了した》
 《裁判員らは、疲れた表情で軽く一礼し、重そうな足取りで退廷していった。被告はしばらく席に座ったまま、弁護人の話を聞いたあと席をたった》

中央大学教授刺殺事件